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家じまいで学んだこと


私は32年間、東京の下町にある風呂なし・共同トイレのアパートで家族と共に生活していました。

その後、両親が千葉の片田舎に小さな平屋を建て、私たち家族は引っ越しました。トタン屋根の家で、周りは雑木林に囲まれ、広い庭がぽつんとした家をさらに小さく見せていたのを覚えています。

年月が経ち、両親が相次いで亡くなり、私はその家を相続する事になりました。

家は空き家に。誰も住まない家は、見るたびに荒れ果てていき、思い出が静かに崩れていくようで、胸が締めつけられました。

しかもその家は借地に建っていたため、誰も住んでいないのに、毎年20万円の地代を払い続けなければならないという現実。 そこで、実家の「家じまい」を決意しました。解体して更地にして、大家さんに借地契約の解約をお願いしました。解体費用300万円はもちろんこちらの負担です。資金作りに5年ほどかかりました。

解体業者さんも決まり、いよいよ解体工事が始まる…というタイミングで、地主さんから庭木伐採の要求がありました。

「庭にある木、全部伐採して更地にして返してね」とのこと。

え?木? 私が物心ついた頃から生えていた木々ばかりで、どれがうちで植えたものかなんて、正直わかりません。

「全部こちらの責任って言われても…」と伝えましたが、地主さんは「お父さんが植えたのを見てた」と譲りません。

ここで工事が止まるのは避けたい私は一歩引いて、明らかにうちで植えたと思われる10本までは伐採しますと提案、なんとか納得してもらいました。


無事に家屋の解体と庭木の伐採が終わり、更地になった土地を見て、私はようやく肩の荷が下りた気がしました。

ところが、また地主さんからさらなる要求。

「裏手の笹も、重機で根っこから取ってくれない?」

……笹? あれは自然に生えてきたもので、誰が植えたわけでもない。しかも、重機で根こそぎなんて、追加費用がいくらかかるか…。

その瞬間、私の中で何かが「プツン」と切れました。

「そんなの勝手に生えたものでしょう!ふざけないでください!」

そう言って電話を切りました。あまりの勢いに驚いたのか、それ以降、地主さんからの連絡はありませんでした。

こうして、私の「家じまい」は終わりました。手元には、軽くなった通帳と、少しの寂しさ、そして大きな安堵感が残りました。

今回の経験で、私は一つ学びました。 「理不尽な要求には、時には強く出ることも必要」だということ。

長年の思い出が詰まった家との別れは、決して簡単なものではありませんでした。でも、思い切って踏み出して、本当によかったと今は思っています。

もし、同じように空き家や実家のことで悩んでいる方がいたら、私の体験が少しでも参考になれば嬉しいです。 人生の節目には、勇気と決断が必要ですね。

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